背中に添えられた手のぬくもり。

背中に添えられた手のぬくもり。

病院のエレベーターを待っていた時のことです。中学生くらいの女の子が、ご両親、そして手術室の看護師さんに案内されて乗ってきました。

小さな背中が、肩を上下させていた

僕のすぐ前に立ったその子の背中は、とても小さく見えました。緊張からなのか、それとも涙をこらえているのか、肩を大きく上下させながら必死に息を整えているのが後ろ姿からも痛いほど伝わってきます。お父さんはその小さな背中に手を当てて、やさしく、何度も摩っていました。お母さんも肩を寄せ合い、家族みんなで我が子の不安を支えようとしていました。エレベーターを降りて、右に曲がったら手術室。やはり、降りて右に案内されていきました。

向かう側も、見送る側も

あんな小さな子が、今まさに大きな不安と向き合い、手術室へと向かっていく。その姿を見送りながら、僕自身の過去の記憶がよみがえり、胸が締めつけられるような思いでした。僕もこれまで何度も手術室に入り、家族に見送られてきました。向かう側も、見送る側も、どれほど心細く、祈るような時間なのか。その怖さも痛さも、身に染みて知っています。

他人の僕が直接声をかけることはできません。ただ、心の中で、がんばれ、大丈夫だから、と祈ることしかできませんでした。届くかどうかも分からないけれど、精一杯のエールをその背中に送りました。

病気や手術に向き合う瞬間は、どうしても孤独を感じてしまうことがあります。でも、あの時女の子の背中を支えていたご両親の手のように、一人で抱え込まずに支え合える温もりも、確かにそこに存在しています。

近日手術を控え、不安と向き合っているあなたへ。あなたのその一歩を、多くの人がそっと応援しています。

講演家  ニーナヒデヒコ

本名 新名秀彦