がんと闘うのをやめた日。

がんと闘うのをやめた日。

がんと闘うをやめた日があります。敵意を燃やすほど、ボロボロになっていった。転移の告知を受けてからしばらくの間、私はがんを完全に敵だと見なし、なんとかして叩き潰そうと必死になっていました。絶対に負けてたまるかと肩に力を入れ、敵対心をむき出しにして毎日を過ごしていたのです。けれど、敵を意識すればするほど心も体もすり減り、気づけばボロボロになっていました。

がんは、侵略者ではなかった

あるとき、ふと思い至った瞬間がありました。そもそもがんは、体の外から突然やってきた侵略者ではありません。元々は自分自身の正常な細胞が、分裂の過程でコピーミスを起こしたもの。いわば、私自身の体の一部だったのです。それなのに外敵のように憎み、力任せに排除しようとすれば、自分の心身が傷ついてしまうのも当然でした。

お腹をそっと撫でながら、声に出した

君が生きるには僕の体が必要なんだから、お互い共存しよう。そう声に出しながら自分のお腹をそっと撫でたとき、胸の奥で張り詰めていた余分な力が、ふっと抜けていくのを感じました。

敵として睨みつけるのをやめ、自分の一部として受け入れ、折り合いをつけて生きていく。この共病という捉え方に切り替わったことで、私の治療への向き合い方は大きく変わりました。

もし今、病気と必死に向き合う中で心が疲れ切ってしまっているなら、一度その拳を下ろしてみてください。力を少し緩めてみるだけでも、目の前の景色はほんの少しだけ違って見えてくるはずです。

講演家  ニーナヒデヒコ
本名 新名秀彦